留学先の日本でこの歴史問題に触れた私は、毎年被害女性の元を訪ね、証言や事実関係の調査・検証をしてきました。24年にわたって活動を続けられたのは、日本の支援者の方々のおかげです。


今日、日本社会で「慰安婦問題」というと韓国女性を対象とした強制性の有無が議論の中心となっていますが、このような問題の矮小化は日本と中国、東南アジアの国々にとって、不幸な歴史をより不幸にさせるものだと思います。


中国人被害女性たちは「私は慰安婦ではない」と長年訴えていますが、実際、彼女たちの被害は日本で語られる「慰安婦」の実態とかけ離れています。彼女たちのほとんどは家から強制連行され、普通の農家に監禁、外から施錠をされ、用を足す時にだけ、門番の監視のもと外に出ることができました。「太陽が欲しい」 という映画のタイトルは、当時の彼女たちが発した心からの叫びです。


映画の中で証言してくれた被害女性たちはすでに亡くなっています。生前、彼女たちが力を絞って私に託してくれた証言と、そこで示された事実を映画として広く日本社会に公開することは、長年、聞き取り調査や生活支援に関わってきた私が果たすべき責任だと思っています。


本作の公開を通して、今を生きる日本の人々によって、彼女たちの歩んだ人生に慈愛に満ちたあたたかな光が当てられることを願っています。



班忠義(はん・ちゅうぎ)|映画監督

1958年、撫順市に生まれる。そこで、戦後日本に帰国できなかった日本人残留婦人と出会い、中国残留婦人問題に取り組み、「曽おばさんの海」(朝日新聞社)を出版、第7回ノンフィクション朝日ジャーナル大賞受賞。
92年、中国人元「慰安婦」万愛花さんと出会い、聞きとり調査をはじめる。中国人、韓国人元慰安婦だけでなく、加害の事実を証言した旧日本軍兵士にも及ぶ。95年、中国人元「慰安婦」を支援する会を発足。99年、ドキュメンタリー映画『チョンおばさんのクニ』(シグロ製作)を監督。07年、ドキュメンタリー映画『ガイサンシーとその姉妹たち』(シグロ製作)を監督。10年、ドキュメンタリー映画『亡命』(シグロ製作)を監督。