中国山西省の若い女性たちが日本軍により受けた性暴力のすさまじさと、心と体に負った傷により生涯にわたって苦しんだことに圧倒される。石田米子・内田知行編『黄土の村の性暴力』(創土社)の記述が映像としてリアルに眼前に現れる。また、日本軍「慰安婦」問題が浮上してから、被害回復をめざして闘い続けた彼女たちの主体性に心うたれる。その姿を記録し続けた班忠義監督に感謝したい。
吉見義明(中央大学名誉教授)
あの戦争が終わって74年。私たちは何を学んできただろう。今また戦争への道が開けてきているように感じられて、私は怖い。こんな時だからこそ、この映画を、多くの人に見てほしい。ここには戦場の映像はないけれど、戦争がもたらす凄まじいまでの暴力が如実に語られている。
事実に目を開き、私たちは「真理を手に入れる必要がある」ことを強く思う。
渡辺一枝(作家)
日本軍による戦時性暴力被害を受けた中国の女性たちの言葉から、戦争はまだ終わっていないということを強く感じました。日本政府が「事実は認定しながらも謝罪・賠償はしない」という態度を取り続ける限り、日本軍による彼女たちへの加害は2019年の今も続いているのです。誠実な謝罪を受けることなくこの世を去られた多くの女性たち、今も声を上げ続ける女性たちを知り、「忘却への抵抗」を担っていくのは私たちの世代だと、強く感じました。
佐多稲子(明日少女隊)
<試写会で寄せられた声>
・学生より
「従軍慰安婦は存在しなかったと言う人がいる。彼らは、女性たちは自ら志願して「慰安婦」になったとも言う。 しかし今日見た映像はそんな発言に怒りを覚えるほど全く異なったものであった。もちろん地域によって異なる側面もある。しかし実際に強制的に連行され、何日も何日も監禁され、性的行為を強制されたのだ。これらは果たして「戦争であるから許されること」なの であろうか。「戦争と共に必要とされるもの」であるのだろうか?私はそう思わない、いやそう思いたくないと言った方が正しいであろう。
暴力を振るう側、振るわれる側との間に振るわれても仕方がないとか、振っても仕方がないという理屈は絶対的にありえないことだ。もしそれが成立するなら世の中から争いが消えることはない。今回の映像を見て強く感じた。」
「元日本軍「慰安婦」問題を知ったのは橋下大阪市長(当時)の発言の件からでした。それまでも慰安婦という言葉自体を知っていても内容までは把握していませんでした。
今年の春学期歴史学で学び、その実態を知りました。自分の無知さにとても嫌気がさしました。それぞれの国、地域によって強制的に連れて行かれた場所によって被害状況が違うこと、映像の中でおばあさん達の口から発せられた生々しい状況、日本軍の女性に対する残酷な行為、知ることが増えるたびにとても悲しい気持ちになります。尊厳を回復できないまま、なくなってしまった被害者の方々もいるので、なおさらもう取り返しがつかないと思い、情けなくなります。
私たちの世代が今から動いたとしても、間に合わないかもしれないと思ってしまいましたが、無知ではいたくありません。何かできることないかと必死に頭を働かせています。」
・一般の方より
「戦争という異常な状態によって人が鬼になる事実は学んでいたが、戦争被害者が戦争後も同胞からも差別を受けるという、肉体的、精神的に被害を受け続けたことを知り、決して許される事ではないと改めて確信した。」
「非常に重たい内容の映画でしたが、実際にこのような事があったと知ることが出来感謝しています。時間の経過と共にどんどん忘れ去られてしまう世の中です。もっと上映の機会が増え、一人でも多くの人達、特に若い世代に観てもらえることができたらいいのにと願うばかりです。」
「万愛花さんが言われる「日本政府は謝罪し、補償しろ」がすべてだと私は思います。右傾化が進む中で、慰安婦問題も含めて「なかったこと」にしようとする主張も顕著になっている現実を思い、どうすればいいか考えることが多い昨今です。」